- Recommended -
高いクオリティを誇るバローロやバルバレスコを生み出すことで有名な、チェレットの醸造責任者を務めるジャコリーノ・ジッラルディがオーナーとなり、葡萄品種の「SYRAH(シラー)」を逆から読むという一風変わったネーミングの「HARYS(ハリス)」というワインを造っています。その名称からもわかるように、シラーをベースとしたヴァラエタル・ワインとなっていますが、実際のセパージュはシラー85%、カベルネ・ソーヴィニヨン15%というブレンド・ワインになっています。
畑は標高500m、傾斜が強く真南、日照時間も長く通気性が良いという優良な条件が揃っています。シラー・ベースのワインということもあり、ランゲにすらなれずヴィーノ・ダ・ターヴォラ(いわゆるテーブル・ワインのカテゴリ)となっていますが、格付けよりもアイデンティティを重視しているので、実際のクオリティは上位格付けワインと比較してもまったく遜色のない出来となっています。
抜栓直後に心地よいバニラ風味が一気に広がり、丁寧な仕立て具合と品位の良さが優しく伝わります。決して重厚なスタイルではなく、体躯も落ち着いた精緻さが印象的ではありますが、コアに潜む葡萄力や兼ね備えたポテンシャルなど、表面上には見えにくい部分に様々なエネルギーを感じます。まさにローヌでもなく、オーストラリア的なシラーズでもない、ランゲならではのシラー像がそこにしっかりと存在します。
現時点で既に美味しく飲めることに加え、表面から伝わる表情にあまり複雑さがないので、場合によっては低い評価を下してしまうかもしれません。しかし、2~3日経過させた時にみせた姿、そしてその昇華レベルを考慮すると、思いのほか深い懐を持っているのではないか、と感じます。数年単位でしっかり時間を与えると、各熟成段階で興味深く化けてくれそうな気配もあるので、長い目を持ってじっくり向き合ってみたいところです。
(2005/04)