- Good Quality -
八ヶ岳の麓、標高750mという高地に位置するのが「ドメーヌ・ミエ・イケノ」。開墾前の畑に猫の足跡が多くあったことから、畑の名前を「猫の足跡畑」とし、会社の名前もフランス語に訳した「レ・パ・デュ・シャ」と名付けています(星野リゾートの「リゾナーレ八ヶ岳」とも提携)。
化学肥料や除草剤を使用せず、グラヴィティ・フローで丁寧に造られたワインは、このピノ・ノワールだけでなく、白のシャルドネも含めて、いずれも非常に流麗で凛とした表情を持っています。まさにコストと手間暇を惜しみなくかけて造られたことが具に伝わる、品位ある仕上がりだとも言えます。2012年のピノ・ノワールは、9月15日に収穫が行われ、生産本数は900本のみ。フレンチオークの小樽で発酵し、その後18ヶ月間熟成。ノンフィルターで2014年4月にボトリングされています。
抜栓後からフローラルな香りが広がり、ブルゴーニュの著名生産者にも相通じるような魅力ある表情と資質が伝わります。コアそのものは緻密で輝きも感じられますが、果実感そのものは控えめで、逆に樽由来の要素や苦味が強い傾向にあります。冷涼で凛としたブレのない表情を持ち、十分な酸を兼ね備えている点など、一定のポテンシャルは感じられますが、現状では全体的なバランス感にやや課題があると言えるかもしれません(今後のヴィンテージに期待)。
今回は、リリースされた直後の2014年以来となる試飲になりましたが、念のために5年程待ってみたものの、結果としてその世界観を表す本質に大きな違いはないような印象を受けます(硬さは適度に解れています)。基本的に「果実の持つ力」よりも「香りの広がる魅力」を嗜むような系譜にあるので、どの熟成段階で飲んでもその本質的な品位と魅力は十分理解できそうです。生産本数が極めて少ないということもあり、入手するのはかなり困難ですが、年々注目が高まる日本のピノ・ノワールの一端を理解するためにも、機会があれば一度は経験してもらいたい1本だと言えそうです。
(2014、2018/01)