- Good Quality -
ボイド・カントナックはマルゴーの格付け第三級シャトーですが、パーカーには「もはや三級に値しない」とまで言われてしまっています。しかし、近年は優れたクオリティを発揮することが多く、各メディアへの取り上げられ方などからしても、比較的注目度は上がってきていると言えそうです。
一瞬戸惑ってしまうような独特の世界観があり、第一印象としては「ボルドーの格付けワインというよりはニューワールド系のワイン」といったものがあります。オーストラリアのシラーズが一瞬脳裏を過るような過熟感ある魅惑的な果実味がベースとなり(それ系の重さやダレはない)、豊かなタンニンとしっかりとした樽の仕立てなど、いたって明確な「陽」の表情が非常に印象的です。しかし、全体としての統一感や懐内のスマートさ、そして明瞭なスッキリ感など、伝統産地ボルドーとしての程よい息遣いが感じられ、漂う風貌としては決してモダンすぎるような系統のものではありません。
抜栓日の印象とはやや異なり、翌日に持ち越すと本来の佇まいを取り戻したかのような落ち着きが見られ、ささやかな泉や小滝が囁くかのような仄かな森林浴気分に浸れるようになります。新世界系の陽的な要素もある程度感じられますが、進むべき本来の道に向かって舵が切られたような印象でもあり、やはり地に足の着いた歩き慣れた道だと安心感があります。
現状でもそのポテンシャルは十分堪能でき、なおかつすべてを引き出すこともできそうですが、内包する意思や指向性といった全体像、そしてその概要における統一性という部分においては、もう少しの間(数年?)熟成させた方がより明確化しそうな印象もあるので、可能であれば年毎に随時飲んでその姿勢変化を楽しんでもらいたいところです。
(2009/10)