- Good Quality -
抜栓日は微細なタンニンがチリチリと揺れ動き、全体的な纏まりにやや欠ける印象がありました。レスタージュ程ではありませんが、構造体のエッジが僅かに緩んでいるのも気になります。指し示す方向は異なりますが、ベースとなる部分の指向性がレスタージュやダガサックと共通する部分もあるので、これが98年というヴィンテージの資質なのかもしれません。
とりあえず翌日に持ち越してみましたが、その頃になると全体がグッと引き締まり、エレガントで格調高い背筋の張りを感じるまでに昇華していました。さらに3日目まで経過させてみましたが、もはや抜栓直後の印象とはまるで異なり、欠点が感じられない絶妙な落とし所で綺麗にすべてが整っていました。
ダガサックのように表面上に魅力が表れるタイプではありませんが、ミディアムボディで無駄に突出した要素がないその様は、一本筋の通った気品を背中で語ってくれるようでもあります。このヴィンテージ単体で評価すると印象は薄いかもしれませんが、他のヴィンテージもあわせて評価することで、グレイサックのもつ良質なアイデンティティを感じることができると思います。
パワーで押すタイプではないので現段階でもしっかり魅力を享受できますが、以前飲んだ81年のポテンシャルを考えると、この98年に関しても年月が経つに連れてより一層洗練感が増していくのではないかという期待が膨らみます。派手さはないものの、個人的にはしっかり評価してあげたい1本です。
(2005/01)