- Very Good Quality -
僅か数年でカンパニア、いやイタリアを代表するまでに躍進した「テッラ・ディ・ラヴォーロ」。ファースト・ヴィンテージは1994年。もともとは建築家の「アルトゥーロ・チェレンターノ」の妻ドーラの祖父が所有していた土地で、家族ぐるみの仲という「リッカルド・コタレッラ」の助言によって本格的なワイン造りを開始したようです。コタレッラといえば「メルロー」のイメージがありますが、このワインは「アリアニコ」に「ピエディロッソ」と、完全に土着品種のみで造られます。
ここ数年は一般層向けに分かりやすいスタイルへと推移しつつある印象でしたが、2008年はある種の原点回帰的な側面が色濃く、再び重圧系のタンニンが支配する剛直資質とやや陰な表情が主体となった通向けのスタイルへと戻りつつあります。抜栓日はかなりタニックで向き合い難い印象ではありますが、決して飲めないというわけではないので、特に無理したような様子は感じられません。2003年のペルカルロや2009年のパロンコーレなどと同様に収斂要素が強くなっていますが、時間を与える事によって適度に熟れてくれるので、飲み難いと思ったら少し余裕を持って接する事をお勧めします。
翌日に持ち越すと、以前のヴィンテージのような「昇華感」は特にないものの、それでも余剰な圧力が軽減され、その内部から熟度ある果実の風味が表出しはじめるので、より素直に向き合う事が出来るようになります。サンジョヴェーゼ系ワイン(キャンティ・クラッシコ)にも似た淡々とした指向性があり、パワーベースの土着品種要素がストレートに具現化されている傾向にあるので、純粋な魅力としてはやや感じ難いかもしれませんが、総エネルギー量としては十分なものを有しているので、そのクオリティはしっかり実感出来ると思います。従来よりもややポテンシャル系要素に力点が推移し、全体のバランス感としてはやや後退したような印象もありますが、本来のテッラ・ディ・ラヴォーロが持つ「通向け」としての世界観がより鮮明になっているようでもあるので、これはこれで前向きに捉えてその表情をしっかりと享受したいところではあります。
(2013/12)