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若いヴィンテージのティニャネッロはこれまでに何度か試飲する機会がありましたが、その世界観や受ける印象はヴィンテージに関わらず常に安定して同一だったので、今回は改めてちょうど10年熟成させた状態で試飲してみることにしました。
結論からすると、熟成した状態でもやはり印象は変わらず「これぞティニャネッロ」とも言うべき明快な世界観で、一口飲むだけでストレートに伝わる甘くリッチな美味しさが堪能できる、まさにマジョリティ向けのモダンワインと言った印象です。むしろ10年程度では熟成感などまだまだ感じられず、その充実した要素のおかげで若々しい姿が常にキープされている印象です。上質な樽由来のバニラ風味が非常に魅力的で、緻密で豊かなボディ、そしてサンジョヴェーゼらしいタイトな酸と、ティニャネッロらしいアイデンティティは健在ですが、ヴィンテージのスタイルもあるのか、相対的にカベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フランらしいグリーンのハーブ風味が意外と明確な傾向にあり、その熟度の高さとは裏腹に、やや青みを感じる傾向にはあります(とは言え程よいアクセントになっているのでネガティブな印象はない)。
翌日に持ち越すと表情はガラッと変化し、ストレートに伝わる甘い魅力は一旦奥に控え、逆にサンジョヴェーゼらしい酸を主体とした堅実な要素が前面に出るようになります(同時にカベルネ系のグリーンのニュアンスも減衰)。内包するエネルギー感なども含め、全体像としては以前試飲した2010年ヴィンテージの方にやや分がありそうな印象ですが、それでもアタックを重視して抜栓日のストレートな魅力を生かしてやれば、変わらず同等の高い満足感が得られそうです。良くも悪くも端的で分かりやすいスタイルなので、滋味深さやじっくり向き合うような飲み方を望む層にはあまり向いていないとも言えますが、それでも世界基準の品質の高いハイエンドワインが持つ世界観は存分に伝わるので、最大公約数的な幅広い層に対して直球で訴求してくれる印象です(所謂素直にお勧めできるタイプ)。
(2022/04)