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広島県三次市の栽培農家「柳哲夫」が管理する農園のマスカット・ベーリーAを使用し、ボジョレー・ヌーヴォーでお馴染みの醸造法でもある「マセラシオン・カルボニック(葡萄を破砕せずタンク内に二酸化炭素を充填させて発酵)」で醸造したキュヴェ。
「シングル・ヴィンヤードのマスカット・ベーリーA」という時点で非常に稀有な存在だと言えますが、樽で熟成される木津田ヴィンヤードとは異なり、MCによってより親しみやすく気軽に飲めるスタンスになっているのが最大の特徴です。とはいえ、実際には想像以上に充実感と緻密さが感じられ、丸みるのある明快な豊かさが印象的でもあります。表層的にはキュートなキャンディさや、イチゴを感じる果実味、そしてゼラチン的な軟質のテクスチャなど、MCで仕上げられるワインらしい立ち振る舞いではあるものの、それでもアタックからしっかりとした旨味が伝わり、味覚で楽しめる素直な美味しさに加え、気軽に飲めるベーリーAとは思えないボリューム感など(意外と濃密)、思いの外しっかりとした飲みごたえを有しているのが非常に印象的です。
確かに、純粋な点数評価として絶賛されるようなタイプのワインではないものの、日常感ある世界観でありながらも、栽培から醸造にかけて一貫して光る造り手のセンスや、三次市という地が持つポテンシャル、これら良質な要素を感じさせながらも価格帯はしっかり手頃なレンジをキープしている点など、素直に評価されるべきポイントを的確に抑えているのが大きな特徴です(シャルドネのクリスプと同様に、広島三次ワイナリーのワインは手頃な価格帯の仕上がりの良さがより印象的)。
(2022/09)