- Very Good Quality -
ラテン語で「信頼で結ばれた絆」という意味を持つ「ボナ・ファイド」ですが、30年来の知人であり、この畑の所有者でもある「Lötter family」との取り組みによって出来た思い入れのあるキュヴェとなります。
キュヴェ・シネマと比較すると、やや低重心な傾向にあり、全体的な重厚感や一体感に勝る印象ではありますが、それ以上に印象的なのが「抜栓直後から素直に楽しめる」というクリスタルムらしい明快さで、確かに清涼感のある硬質な資質がコアにあり、黒系果実寄りのドッシリかつポッテリとしたボディではありますが、旨味をしっかり感じる果実の魅力によって素直にわかりやすい世界観となっています。ヴィンテージのスタイルなのか、相対的にはキュヴェ・シネマと同様にやや陰な表情が主体になっていますが、それでも抜栓直後から素直に楽しめるというのは総じてポジティブな印象を受けます。
抜栓日の明快さからは一転、翌日に持ち越すと逆に質実系の要素が色濃くなり、ポテンシャル自体はより感じやすくなるものの、反面やや小難しさが増す傾向にあります。キュヴェ・シネマとは全く逆の指向性なのが興味深いところではありますが、表面上の魅力に捉われることなく、本質を見出しやすくなるので、やや軟質で鈍い表層が時折垣間見えることや、余韻も短めな傾向にあることなど、ポジティブな側面だけでなく、そうでない側面もしっかり窺い知れるというのはある意味メリットと言えるかもしれません。
全体的に、ニュージーランドのピノ・ノワールのようなニューワールドらしい分かりやすい表情と、ブルゴーニュのような伝統産地らしい質実さの両方の要素を兼ね備えているのが非常に興味深く、どちらかと言えば技術的側面が色濃く出た端的な表情ではあるものの、それでも将来的な発展が見込める良好な世界観なのは確かなので、生産本数の少なさと、それに反する需要の高さ、そして為替の影響などで今後価格が高騰していかないかどうかが唯一の懸念点かもしれません(今後の進化と発展に更に期待したい)。
(2022/10)