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ジャクソンを象徴とするシャンパーニュがこの700番シリーズ。1898年に創業100年を記念して瓶詰めされたのが番号「1番」であり、2000年にこのシリーズを造ると決めた時の瓶詰めナンバーがちょうど「728番」だったことから、「キュヴェ728」として最初の700番シリーズが誕生します。ジャクソンの中では唯一ブレンドで造られるこの700番シリーズは、一般的なノン・ヴィンテージ・シャンパーニュとは異なり、そのメゾンのスタイルを表すのではなく、ヴィンテージの個性を生かしながらも、本当の意味での「グラン・ヴァン」を表現するために造られています。そのため、ベースとなるヴィンテージを基軸としつつも、より複雑性を高めるたにヴァン・ド・レゼルヴがブレンドされています。
745は2017年が80%、ヴァン・ド・レゼルヴ(739〜743)が20%という比率でブレンドされ、セパージュはシャルドネ50%、ピノ・ノワール40%、ピノ・ムニエ10%となっています。村別で言うとアイ、ディジー、オーヴィレイが66%、アヴィーズとオワリーが34%。ベースとなる2017年はコート・デ・ブランの地区が甚大な霜害を受けた結果、例年よりもピノ・ノワールの比率が高いという稀有なヴィンテージとなり、アイが誇る特別なリュー・ディでもある「ヴォーゼル・テルム」のピノ・ノワールが全量この745にブレンドされています。
デゴルジュマンは2022年1月。ドザージュはまさかの0.75g/lと極僅か。従来のジャクソンの700番台シリーズとはやや異なる印象ではありますが、それでもピノの比率の高さから来るリッチさよりも、低ドザージュならではのキレやシャープさの方がより印象的で、抜栓直後の印象だと見た目やセパージュ比率に反してブラン・ド・ブラン的な厳かさの方がより前面に出ています(こういった指向性は従来の700番台と同様)。それでも表情はシンプルな傾向にあるので、抜栓日の印象だとやや過小評価してしまいがちでもあります。それでもやはり潜在的なポテンシャルは高く、翌日に持ち越すとピノらしい充実感に加え、マンダリンオレンジや桃などの果実味も感じられるようになり、ボディそのものはタイトの引き締まっていながらも、その内部には思った以上の充実要素が封じ込めらている印象でもあります。表層的にはかなりドライな仕立てになっているので、泡のエッジが絡んで酸や苦味などを感じやすくなりますが、その実、純粋な泡そのものはかなりボディにしっかり溶け込んでいるので本質的にはクリーミーなテクスチャを実感することが出来ます。
ジャクソンと言えば、やはりポテンシャルを存分に引き出すにはそれ相応の時間がかかる、といった傾向にはありますが、それでもデゴルジュ後に3年半以上熟成させたこともあってか、思ったよりも素直に嗜める印象で、ピノの比率が高くなったとしても従来のジャクソン像はキープできるような舵取りがうまくなされているので、しっかり時間をかけて向き合えば十分満足できる結果が得られそうです。とは言え、一昔前とは異なり価格が2.5倍以上まで上がってしまっているので、純粋なコストパフォーマンスとしては翳りが見えているとも言えます。
(2025/08)