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シャトー・メルシャンの源流でもある「大日本山梨葡萄酒会社」が、1877年(明治10年)に「高野正誠」と「土屋龍憲(現存する日本最古のワイナリー「まるき葡萄酒」の創業者)」を祝村葡萄酒醸造伝習生としてフランスに派遣したことで歴史が動き、結果、日本のワイン造りにおける礎となりました。その2人の生家が現在も継続して勝沼町岩崎地区でブドウ栽培行っており、その両家が栽培した甲州を樽発酵、樽熟成(約6ヶ月)したのがこのキュヴェとなります。ちなみに、2019年の生産本数は約6,300本のみ。
陽的な明るいシトラスの風味が鮮やかに伝わり、そのボディを樽要素が下支えしている傾向にあります。一口で分かる山梨甲州との違いが「充実感」と「樽要素」ですが、一昔前にあったような樽が前面に出るようなスタイルではなく、あくまでも一歩引いたスタンスで全体をうまく纏める影の立役者的な存在感なので、むしろ全体としてのパッケージングの良さが際立つ傾向にあります。翌日に持ち越すとさらに一体感が増し、レモンやグレープフルーツのような柑橘風味が主軸となった「純粋な飲み物としての美味しさ」に焦点が集まるようになるので、主要な層に対して素直に訴求するような印象を受けます。
山梨甲州と同じように純粋な評価点で勝負するようなタイプではありませんが、それでも美点は明確で、この岩崎甲州はどちらかというと一般家庭の日常向けとしてより力を発揮してくれそうな印象を受けます(いずれにしてもコストパフォーマンスは高い)。ちなみに今回の2019年ヴィンテージは、メルシャン初となる女性仕込み統括に就任した「丹澤史子」が、ブルゴーニュでの研修から帰国後に初めて手がけたワインの一つになります。
(2021/07)