- Very Good Quality -
マルサネという地で非常に高い評価を受ける造り手が「シルヴァン・パタイユ」。長年コンサルタントとして経験を積み、1999年に祖父から畑を受け継いで独立。2007年からビオロジック、さらに翌年にはビオディナミへと移行し、醸造に関しても2013年からは酸化防止剤を使用しない方向へとシフトしています(ボトリング時に少量のみ添加)。
大司教が最初に植樹したとも言われる歴史ある区画がこの「ル・シャピトル」。5haの内、シルヴァン・パタイユが所有するのは北側の斜面上部1ha。畑は東向きで標高は300m。土壌は石灰岩の岩盤を持つ淡いピンク色の砂利土壌で、1951年、1989年、2006年に植樹。全房比率100%で天然酵母で発酵。15%新樽で18ヶ月間熟成。2018年まではACブルゴーニュでしたが、INAOの格付け変更によって2019年からはマルサネとして認められています。
ロンジュロワよりも更に明確な清涼感とタイトに引き締まった堅牢性が目を引き、ボディの密度感や果実味に伴う仄かな旨味と、構成要素やバランス感覚、そしてポテンシャル要素を一層感じる仕上がりになっています。今回試飲したクロ・デュ・ロワやロンジュロワと比較すると、明らかに質実さが一段上で、より高い訴求力を感じさせる表情となっています。ボディは他のキュヴェと同様にボリューム感のある柔らかい資質ではありますが、そこに硬い表情の柱があり、やや軋みを伴う傾向にはありますが、柔らかさと硬さがうまくバランスを伴っているので結果としてポジティブな印象を受けます。
全房発酵らしい果梗的な硬さがより顕著である点や、ポテンシャルを感じるとは言っても、長寿命系というよりも今からでも楽しめる上に3〜4年で飲み切ってしまって問題なさそうな印象でもあるので、あまり過度な期待は禁物ですが、それでもシルヴァン・パタイユが誇る造りの本質を感じられる出来なのは確かなので、最もお薦めしやすいキュヴェだとは言えそうです(そうは言っても相対的にかなり高価ですが)。
(2025/07)